補聴器とは…?どんな風に聞こえるの?補聴器の聞こえ方 | 50dBの世界

補聴器とは

誤解されている方が多いため、はっきりさせたい――補聴器を付けていれば普通に聞こえる、という事は絶対にありえない。ここが実は非常にやっかいな誤解を生みやすく、周囲の人々がいかに理解してあげるかが重要となる。

ただし、この記述はアナログ補聴器を装用している2011年時点での感想となるため、現状のデジタル補聴器とは違うのかも知れない。

まずは補聴器の仕組み

補聴器は3つの要素から構成されている。まずは音を拾う「マイク」、そして音を増幅させる「アンプ」、最後に音を出す「スピーカー」の3つである。非常にシンプルでわかりやすい形である。近年はデジタル化も進み、機能も高性能化している。これ以上の説明は各補聴器メーカーのHPをご覧になった方が早い。

補聴器は単純に音を増幅するだけ

補聴器は「全ての音を増幅するだけ」である。普通の人間の耳では、周囲がうるさくとも、近くで会話している人の話し声は聞き取る事が出来るようだが、補聴器ではこれが聞き取れない。周りの音も増幅され、一緒にまざって聞こえるからだ。居酒屋などで飲み会が行われたとしよう、普通に周囲がガヤガヤとしているが、補聴器を通すと、このガヤガヤが増幅され、すぐ隣に居る人の会話すらも全く聞こえなくなる。ほぼ全くである。誇張ではない。ただ、口が動いているだけに見える。ガヤガヤの中に隣の人の声は完全に掻き消える。このおかげで飲み会等は会話が一切聞き取れず、だんまりしてしまうハメになる。何もせずに飲んで食べるだけとなる。これは経験上、かなりの苦痛を伴う。

こればかりは相手がその事を知っていたとしても、どうしようも無く、これを改善する方法は今のところ無い。ただ、黙っている自分を気にしないでもらうとか、その事を知らない同席者に誤解しないよう伝えて欲しいだけである。補聴器がどれだけ進歩したとしても、補聴器自体は、周りのガヤガヤと目の前の声を別のものとして処理する力が無いのだ。補聴器に入った音は全て増幅され、ダイレクトにスピーカーに流される為、周りがうるさければ非常に不快だし、耳が疲れて仕方が無い。 もし、複数人で飲み会やパーティーなどを楽しむ場合は、屋外のバーベキューや友人宅で第三者が居ない少人数で行うのが一番ありがたい。

一番大きい音を拾う

ガヤガヤしてなかったとしても、例えばオフィスなどでよくある光景だが、二人の人間が同時に話すとしよう、すぐ隣の人とあなたが会話している。向かい側では無関係の会話を別の二人がしているとする。何気ない日常だが、もし無関係の二人の声が隣の人よりも大きかった場合、隣の人の声はかき消える。ガヤガヤしてなくても消えるのだ。どうやら補聴器は大きい音を優先して拾う性質があるようだ。ガヤガヤしないよう少人数で集まり静かな所で話し合いがされたとしても、数人が一斉に話し始めると目の前の人の声を聞き取るのは大変難しくなるのだ。

突発音や環境音がうるさい

補聴器が拾った音は増幅されダイレクトに耳に入る為、突然の突発音については心臓がばくばくする勢いでびっくりする。それは、テーブルにコップを置いても同じである。普段皆が何気なくテーブルにコップを置いたとしても、その音は補聴器にやけに響くのだ。その他にも、エアコンの音、紙をガサガサさせる音など、それらはすさまじく耳に響く。誰かが2メートル先で書類を封筒に入れるだけの単純作業をしていたとしても、ガサガサが耳にやけに響き、隣の人の声もかき消え、会話も困難となる。

けっこう悩むハウリング

ハウリングとは、マイク→アンプ→スピーカーの3要素をループさせる事で発生する現象であり、ピーっと高い音が鳴る。補聴器の構造上、マイクとスピーカーが非常に近い為、補聴器を手のひらで覆うだけでハウリングが起こる。これは耳かけ式も耳穴式も同様だが、マイクとスピーカーが別になっているボックスタイプの補聴器はその心配は少ないだろう。いずれにせよ、私の補聴器は一番目立たない耳穴式であるが、頻繁にハウリングする。ハウリングは当然、耳に装着している最中でも起こる。装着しながら手のひらで耳を覆うと100%ハウリングする。耳に上手く装着されず、ずれていても鳴る。走ったりすると、身体が上下するが、補聴器がずれてくるので、踏み込んだ瞬間にも鳴ったりする。ハウリングは周囲に迷惑を掛ける事にもなるが、本人が一番辛い。それはそうだ、耳元で突然、ピーーー!!と甲高い音が鳴るのだから。難聴とは言え、自分の耳の穴で鳴る音は非常に不快であり頭が痛くなる。さて、このハウリング、何事も無ければ鳴らないのだが、ソファなどに寝そべりながらテレビを見る際、耳を下に出来ない、就寝の際は仰向けに限定され、寝返りもうてない、などと不便である。もちろん一人で寝るのなら外して寝ればいいのだが、もし赤ちゃんが居て、夜泣きを聞き取らなきゃいけない場合や、大切な人と一緒に寝なければならない場合など、補聴器を付けながら寝なければならない事は多々あるものだ。

電話は出来ない?

電話はなんとか可能である。まず、私の補聴器は耳穴式だが、このタイプ若しくは耳かけ式であれば電話は可能である。しかし、ボックスタイプである場合、電話は困難となる。マイク部分が耳には無いのだから。ただ、電話自体に特別な装置を付け電波を飛ばし、補聴器側でその電波を感知し電話の音声を聞き取るなどのシステムもあるため、一概には断言出来ない。私はこのシステムを経験した事がないので、どのように聞こえるのかはわからない。ここではあくまでも50dBの人間が耳穴式の補聴器を装着し、一般的な電話を利用した場合の話である。

耳穴式の補聴器で受話機からの音声を聞こうとするとまず100%ハウリングする。耳を覆う事になるのだから当然である。なので、私の場合は補聴器のボリュームを下げ電話をする事になる。ボリュームを下げると、ハウリングしにくくなる為である。だが、そこに大きな問題がある。ボリュームを下げると今度は相手の話が聞こえなくなる。ハウリングしない範囲に補聴器のボリュームを調整し、更に相手の声が聞こえるように電話器本体の受話音量を調整し…などとかなりシビアな事態になる。これは結構面倒である。私は通常のサラリーマンとしてある企業に勤めているが、電話対応をしなければならない事も頻繁にあり、絶えずこの問題に直面している。自分専用の電話器があれば最初にコツをつかめば何とかなるのだが、数人が使用するような電話の場合、電話器本体の受話音量の調整が日によって変わっていたりするなどして、電話に出る度に補聴器の調整をしなければならず苦労する。相手はもしもし?と言ってるのに、こちらはモタモタとハウリングしないように調整し、補聴器のボリュームを変え、ちょうど良い頃合いを確認してから、「失礼しました…お電話ありがとうございます…」などと会話が始まる。これが毎回である。相手によっては失礼かも…と冷や汗が出る。また、その状態を近くで見てい人間はまず怪訝な顔をする。難聴とは知っていても、ハウリングの事までは知らないのだから当然である。

音楽が苦手

補聴器を装着すると、まず音程が全くわからなくなる。そもそもこんな小さなアンプとスピーカーに外部の音をそのままの音程で増幅させ忠実に再現させるような高度な機能があるとは到底思えない。しかも補聴器はその人の聞き取りにくい音域帯を増強するなど、音程の再現を考慮しているものではないのだ。補聴器の種類によっては、その人が聞き取りにくい音が高音域であった場合、補聴器が聞き取りやすいように高音部分を低くするような機能さえもある。そして、前記の一番大きい音を拾うでも書いたように、複数の楽器が集まっていると、その都度大きな音を拾う為、結果的にぐちゃぐちゃなウネリに聞こえ、まともな音楽に聞こえて来ない。だが、私自身音楽をまともに聞いた事が無いので、健聴者がどのように音楽を聞いているのかが全くわからない。要するに違いが説明出来ないのだ。もしかしたら健聴者もこんな風に聞こえているのかも知れない。健聴者が50dBの世界をわからないのと同様に私にも健聴者の世界がわからないのだ。

さて、音程がわからないとなると、まず間違いなく音痴であるが、カラオケなどは惨憺たる結果になる。スピーカーから流れてくる音楽がわけのわからないウネリに聞こえる。リズムがわからない。シンプルな音なら何とかわかるが、ロック調の激しい曲になると、ほぼ理解出来ず、ただの雑音だ。そして、歌いやすいようにメロディーが流れているらしいが、これも聞こえない。「キー調整」の必要性がわからない。そして、マイクで出した自分の声が聞こえない。この状態でどうやって歌うのだろうか?一般的な社会生活を送って居れば、当然ながらカラオケに行かざるを得ない様な事態に何度も直面する。20代前半の若い頃に友人同士で行くカラオケであれば「俺は音痴なんだー」などとアピールして歌うし、友人も「ホントに音痴だなー」と簡単に流してくれるが、会社の集まりでカラオケなどに行き「新人は歌う事!」などとなったら、もう大惨事である。歌い出した途端に静まり返る。下手なりに盛り上げてくれるような空気などまずあり得ない。シ―――ン…である。拍手も起きない。良く知らない人同士とカラオケはまず間違いなく落ち込む事になる。いくつかの修羅場をくぐったが、今でも思い出す度に頭を掻き毟りたくなる。

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